日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

プロメア/PROMARE(2019年)

プロメア/PROMARE(2019年)監督:今石洋之

★★★

 

確かに面白いのだが


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○あらすじ

突然変異で誕生した新人類「バーニッシュ」により、世界の半分は焼失してしまった。後に「世界大炎上」と呼ばれる大災害から30年、社会ではバーニッシュの過激派「マッドバーニッシュ」の火災活動が問題視されていた。対バーニッシュの特殊部隊「バーニングレスキュー」に所属する新人隊員のガロ・ディモス(松山ケンイチ)は、鎮火活動の最中、マッドバーニッシュの首領リオ・フォーティア(早乙女太一)と衝突する。

見事リオに勝利し、共和国司政官であるクレイ・フォーサイト堺雅人)から表彰を受けるガロ。だが首領であるリオが逮捕されたにもかかわらず、政府によるバーニッシュ弾圧は一層強まっていく。悩みつつも活動していたガロは、収容所から逃亡したバーニッシュたちと山奥で遭遇する。彼らの口から聞かされたのは、政府、そして恩人であるクレイが、バーニッシュを非人道的な実験に巻き込んでいるという話だった。…

 

 

 

『プロメア』は2019年公開の日本アニメ映画だ。監督は今石洋之、脚本は中島かずき。『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』などで知られる黄金コンビだ。火を消す消防隊の主人公と、炎を放つ新人類のライバルが繰り広げる対立と共闘を描いた作品だ。消火活動といいつつ実態は巨大ロボットアニメで、主人公らは巨大ロボット、ライバルらは変身スーツのようなものを着込んで戦闘する。

戦闘シーンのアニメーションはことごとく色鮮やかで、劇中のBGMも素晴らしい。蛍光色中心のキャラクターたち、炎の描写はそれ単体で楽しめるレベルに達している。予備知識なく観始めた作品だが、とても楽しめた。週末にふらっとみる映画としては一級品の仕上がりだろう。

 

 

 

物語のテーマや構成、人物関係もわかりやすい。

主人公はライバルと信条の違いで対立し、尊敬していた恩人は思いもよらぬ行動を選択する。「炎」として存在する脅威や、本来ともに戦うべき立場の政府と戦い、勝利する。ロボットアニメらしく新兵器はどんどん出てくる。そして世界最大の危機がやってきて、主人公は仲間やライバルと協力して、勝利する。お手本のような構成だ。

 

 

 

 

今石・中島がタッグを組む作品では、熱血や情熱といった「勢い」が魅力となっている。綿密に練り上げた世界観で、造形をしっかり固めたキャラクターたち。彼らが交流し、対立すれば、何らかの問題が起こる。時に解決しきれない深刻な事件が起こる。

ネタバレになるのでぼやかすが、『プロメア』でも世界にとって深刻な脅威が発生する。主人公のガロとライバルのリオは協力して解決にあたるのだが、そのままでは力が及ばない。したがって、今石・中島による「勢い」が必要になる。作品中、それまでのパワーバランスを無視するかのような超パワーが生まれてくる。

 

 

 

超パワーは作品中の問題をすべて解決する。地球の環境を揺るがす大災害や、的人物の狂気を、まるでなかったことにしてしまう。作中で「デウスX(エックス)・マキナ」と名付けられたロボットは、結果的に『プロメア』のあらゆる課題を解決して、人類の新たなステージをもたらしてしまう。

誤解しないでほしいのだが、赤宮自身、超パワーが大好きだ。特にロボットアニメの超パワーは大好物だ。マジンガーZEROの因果律すら支配する超パワーが好きだ。ゲッターエンペラーが持つ誰にも勝てなさそうな超設定が好きだ。

 

 

 

けれど『プロメア』が人種差別を克明に描いたことを考えれば、手放しで喜べないところがある。

炎を操る「バーニッシュ」は差別を受ける側の人間として描かれていて、彼らの受ける仕打ちは、観ていてとても痛々しい。街の住人は「バーニッシュの焼いたピザなんて食えるか」と吐き捨て、ピザを焼いた無垢なバーニッシュはやがて政府の犠牲になる。

このあたりのシーンを見て感じた不快感、違和感を、超パワーで解決してしまっていいのかと、強く感じてしまったのだ。繊細な不安をエンタメでごまかしていいのか。「勢い」で解決してしまっていい問題だったのか。

もちろん一見しただけなので、上の批判についても、自分が見落としている部分が多いのかもしれない。細かい設定を読めば、腑に落ちるのかもしれない。 

 

 

『プロメア』はエンタメとして一級品だ。観ていてとても楽しい作品だった。それでも、鑑賞後の違和感が少し残った。

 

 

 

2021/08/29