日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

キルトに綴る愛/How to Make an American Quilt(1995年)

キルトに綴る愛/How to Make an American Quilt(1995年)監督:ジョスリン・ムーンハウス

★★★

 

間違っても笑い飛ばせばいい


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○あらすじ

大学院生のフィン(ウィノナ・ライダー)は修士論文の執筆に苦戦している。何度もテーマを変え、選んだテーマ「女性の手仕事」。休暇も兼ねて祖母ハイ(エレン・バースティン)の家に帰省したフィンは、祖母の姉グラディ(アン・バンクロフト)ら個性的な老女たちと交流する。7人の老女は共同でキルトを作るために集まっていた。送り主は、恋人のサム(ダーモット・マローニー)にプロポーズされたフィンだ。

老女たちは恋愛の名手ばかりだ。例えば、サムと喧嘩したフィンが相談を持ちかけると、彼女たちは昔の恋物語について楽しそうに語ってくれる。浮気や不倫、一夜限りの恋。遠い過去を味わい、老年期を楽しむ女性の姿に、フィンは学びを深めていく。

一方、論文執筆もうまく進まず悩みを抱えるフィンの元に、プールで知り合ったレオン(ジョナサン・シェック)がやってきた。「畑で取れたいちごを食べよう」と誘うレオンに連れられて、二人はデートに出かける。…

 

 

 

『キルトに綴る愛』は1995年公開のアメリカ映画だ。恋人にプロポーズされ、今後の生き方に悩む女性フィンに、彼女を見守る7人の女性たちが自身の生き方を通じて助言を授ける物語だ。切端をつなげて作るキルトの生地に、くっついて離れる人間関係を重ね合わせ、女性たちの生きる姿を生き生きと語る構成になっている。

主演のフィンを演じるのはウィノナ・ライダー。『ブラック・スワン』や『ストレンジャー・シングス』で見せた円熟味ある演技とは異なり、ボーイッシュなアイコンとして活躍していたころの勢いある姿を見せている。祖母や母の時代と異なり、自立した女性として描かれたフィンは、恋人の強い要望にも「ノー」と応えられる人物だ。ウィノナ・ライダーはこの(当時としては)新しい女性像を、力強くかつ女性らしい肢体を持って鮮やかに演じている。

 

 

 

物語の舞台となるのは1990年代のカリフォルニアの田舎だ。しかし一方で多くの回想シーンが含まれる。観客は主人公のフィンと同じ視点から、老女たちの過去の恋愛模様を振り返っていく。

この「恋愛模様」がとにかく赤裸々だ。夫の死期が近づいているのに、姉の夫と不貞を働いてしまったハイ。ハイと夫の裏切りに怒り、家中の割れ物を割り尽くしていくグラディ。召使いながら高貴な男性の子供を身ごもったアンナに、夫の浮気に苦しみ続けるエム。

人生を味わい尽くした女性たちは、過去の失敗や出来心にとにかく寛容だ。悲しみや怒りは感じたけれど、今では気にしていない。苦しかったけれど、たしかに起こってしまったものと認めて、「恋愛模様」としてキルトに織り込んでいく。最終盤、フィンにプレゼントされたキルトには、7人の女性たちが経験した各々の恋愛模様が象徴的に綴られている。

 

 

 

ジャンルとしてはドラマ作品で、脚本の話運びがとても丁寧だ。登場人物の会話は穏やかで聞きやすく、構成上も無理がない。それぞれが経験した過去の恋愛や葛藤もきれいに解決される。登場する男女たちはそれぞれくっついて離れて、あるべき場所に戻っていく。

 

 

 

『キルトに綴る愛』で描かれた老女たちは力強く生きながら、過ぎ去った過去の日々を懐かしく思っている。それでも、他人とくっついたり、離れたり、そしてまた出会ったり。目まぐるしく変わる人間関係は、決して心地がいいだけのものではない。私たちもいつかは、老女たちのように、過去を懐かしく振り返るときが来るのだろうか。

 

キルトに綴る愛(吹替版)

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2021/08/30