日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

総集編・オススメ映画記事10選②

日刊映画日記・総集編②/The Daily Movie Diary Omnibus No.2(2021年)

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前回の総集編から4年も経ってしまいましたが、久しぶりの総集編です。

 

1.北北西に進路を取れ/North by Northwest(1959年)

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広告会社を経営する色男ロジャー・ソーンヒルケーリー・グラント)は、取引先との会食中、給仕が「キャプラン様」と読んだ声に誤って反応してしまう。謎の男「キャプラン」を追っていた2人の男はロジャーをキャプランと勘違いし、ロジャーを郊外の屋敷へと誘拐するのだが…

 

「オススメの映画はありますか?」と尋ねられたら必ず紹介する作品。サスペンスの帝王アルフレッド・ヒッチコックの傑作で、観始めたらワクワクが止まらない。計算され尽くしたエンターテインメントを見てみてほしい。

 

2.バベル/Babel(2006年)

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静養のため、モロッコを旅行していたジョーンズ夫婦。夫のリチャード(ブラッド・ピット)と妻のスーザン(ケイト・ブランシェット)は、バスに乗ってモロッコの広大な大地を走っていく。彼らは、自分たちの子どもを亡くして以来、なんとなくお互いを信頼できなくなった。突然、ライフルの銃声が鳴り響いた。驚いたリチャードがスーザンを見ると、肩から大量の血が流れ出している…

 

『バードマン』『21グラム』のイニャリトゥ監督の作品。モロッコや日本、国境を超えた物語が並行して進行し、文化や言語、そして障がいを超えたコミュニケーションを模索する意欲作。公開当時は菊地凛子の世界進出作としても話題となった。
難解なテーマ故に評価は芳しくないが、刺さる人には徹底的に刺さる傑作だ。人とのやり取りがどんどん難しくなっていくコロナ禍、何か生きるヒントを得られるかもしれない作品。


3.天国と地獄(1963年)

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丘の上の豪奢な一軒家、子どもたちが元気いっぱいに遊ぶ声が聞こえてくる。靴会社の常務を務める権藤は、会社の経営権を巡って首脳陣と争いを繰り広げていた。総会対策で大量の資金調達の目処がたった瞬間、今の電話が甲高い音を立てて鳴り響く。受話器を取ると「息子を預かった、三千万円を払え」と身代金を要求された。権藤や妻は動揺するが、そこに元気そうな息子が部屋に入ってくる。胸をなでおろした権藤だが、息子は「友達が見つからない」と話す。誘拐犯は、権藤の息子と友達を間違えて誘拐していた…

 

黒澤明は『七人の侍』や『羅生門』の評価が高すぎて、現代劇の名手であることを見落とされやすい。『天国と地獄』は戦後のビジネスパーソンと、成功を羨む若者世代との衝突を見事に描いた作品だ。富裕層との対立、現在まで残る根深い日本社会の問題をえぐり出したサスペンス映画に仕上がっている。

 

4.Tokyo Idols(2017年)

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千葉県出身、東京で精力的に活動するアイドル、柊木りお19歳。歌手を目指し、アイドルとして修行を続けている。彼女の日常はせわしないが、その表情から笑顔が消えることはない。アイドル活動を続ける彼女と、そのファンクラブ「高まりおブラザーズ」の活動を通じて、広がり続ける日本のアイドル産業の実態をえぐり出す…

 

三宅響子監督の意欲作。海外の視点から日本のアイドルビジネスの問題を描こうとした作品だが、アイドルとそのファンの熱気が、作り手の想定を上回ってしまった。制御できない素材をなお映画に仕立てようとする三宅監督の試行錯誤、そして外野の声なんて気にもとめないアイドルとファンの強いつながり。予想を超えた方向に進むからこそドキュメンタリー映画は面白い。

 

5.タクシー運転手 約束は海を越えて/A Taxi Driver(2017年) 

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1980年5月の韓国・ソウル。タクシー運転手のキム・マンソプ(ソン・ガンホ)は、盛んなデモ活動にうんざりしていた。日々のタクシー収入が生活の糧なのに、学生のせいで仕事がうまくいかない。未払い家賃は10万ウォン。そんな折、定食屋で同僚と話していたマンソプは「外国人を光州につれていって帰るだけで10万ウォン」という仕事を耳にする。定食屋を飛び出し、タクシーに飛び乗り、待ち合わせ場所に向かうマンソプ。10万ウォンの仕事は俺がもらった!…

 

 

1980年5月の韓国で起こった「光州事件」を取材したドイツ人ジャーナリストと、彼に同行したタクシー運転手の物語。政治意識が低く、自分のことで精一杯だったタクシー運転手が、凄惨な「光州事件」を前に立ち上がる作品だ。主役は韓国の最強俳優ソン・ガンホアカデミー賞を獲った『パラサイト』の訪れを予言していたかのような大傑作だ。

 

6.38人の沈黙する目撃者/The Witness(2015年)

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1964年3月13日、ニューヨークでキャスリーン(キティ)・ジェノヴィーズが暴漢に殺害される事件が発生した。被害者は何度も大声を上げて助けを求めたが、38人の目撃者は誰ひとりとして助けようとしなかった。他の誰かがきっと助けてくれるはずだ――「傍観者効果」の例として今も語り継がれるこの事件。50年が経ち、キティの実の弟ウィリアムは姉の死の真相を探り始める。しかし調査を通じて分かったのは、目撃者たちが救助活動に携わっていたという証言だった。「38人の目撃者」たちは本当に「沈黙」していたのか? そうでないとすれば「沈黙」という「事実」を作り出したのは、いったい誰だったのか?

 

アメリカで絶大な影響力を持つ「キティ・ジェノヴィーズ事件」の真相を、キティの実の弟とともに明らかにするドキュメンタリー作品。「見ているだけで何もしなかった38人」という「神話」は、なぜ生まれてしまったのか? 報道によって上書きされ、神話となってしまった真実と、知られざるキティの姿が、関係者の手によってありありと深堀りされる。

 

7.LIFE!/The Secret Life of Walter Mitty(2013年)

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雑誌LIFE編集部のネガ管理部門に務めるウォルターは、勤続16年のベテラン社員。いつも妄想ばかりして、仕事も恋愛もいまいち踏み出すことができない。挙句の果てに出版不況の煽りを受け、LIFE誌の廃刊が決まってしまう。最終号には有名写真家から送られてきた「25番目のフィルム」が採用されることになったが、なぜかそのフィルムが見つからない。こうなったら写真家に会いに行くしかない。わずかな手がかりを元に、グリーンランドに滞在する彼の元に飛んでいくことを決断する…

 

『LIFE!』は成長する男の物語ではなく、もともと持つものを再発見していく物語だ。日々真面目に過ごしていた男に与えられた不運、そこでいかに立ち振る舞うかによって、人生の有り様はどんどん変わってくる。成長しなくても、今あるものを再発見するだけで、世界は劇的に変わる。辛いことが続き、自分を信じられなくなったとき、必ず見たくなる作品。

 

8.ニート選挙(2015年)

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大学卒業後、役者を目指して上京した千尋は、夢を諦め地元に帰ってきた。親の勧めで就職活動を進めるが、100戦100敗、どこも雇ってはくれない。ニートとして生きていた千尋だが、ふとしたきっかけから商店街の活動に携わる。草の根の活動を通じて商店街を変えようとする千尋だが、経験のない自分にできることは少ない。一念発起して出馬し、議会でニートの意見を代弁することを目指し始める…

 

棒読みのキャラクター、映像や編集の冗長さ、崩壊したプロット。ダメな部分を煮詰めたような地方の映画作品。ただ、見返してみると、ダメなりに映画への愛には溢れていて、憎めない。今より少し若かった赤宮が、映画関係では珍しく、感情的にボコボコ書いてしまった記事。

 

9.アメリ(2001年)

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1973年9月3日18時28分32秒、毎分1万4670回ではばたく1匹の羽虫が、モンマルトルの路上に留まった。その時、丘の上のレストランでは、一陣の風が吹いて、魔法のようにグラスを踊らせた。同じ時、トリュデーヌ街28番地の5階で、親友の葬儀から帰ったコレール氏が、住所録の名前を消した。また同じ時、X染色体を持つ精子が、ラファエル・プーラン氏の体から泳ぎだし、プーラン婦人の卵子に到達した。9ヶ月後、アメリ・プーランが誕生した…

 

とにかくお洒落なフランス映画。2019年に亡くなった瀧本哲史先生が「好きな作品」と話していて、亡くなった直後に追悼の意味を込めて観て、書いた記事。

「まさに現実との対決、アメリはそれが苦手だった!」

アメリの自由だ。夢の世界に閉じこもり、内気なまま暮らすのも、彼女の権利だ。人間には人生に失敗する権利がある」

意思決定に強い関心を持っていた瀧本先生だったから、一歩踏み出すか、踏み出さないかで悩むアメリの姿が、とても可愛く見えたんだろうなと想像している。聞いてみたかったな。

 

10.惑星ソラリス/Солярис(1972年)・ソラリス/Solaris(2002年)

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地球から遠く離れたところ、海と雲に覆われた惑星ソラリス。心理学者のクリスは単身宇宙に上がり、ソラリスを観測する宇宙船「プロメテウス」の調査に赴く。宇宙船では友人のギバリャンが既に自殺していた。彼の死の真相を探るクリスだが、乗組員からは「やがてわかる」という的外れな答えしか得られない。疲れ果てて眠るクリス。するとどこからか美しい女性が現れ、クリスは彼女を優しく受け入れる。意識が目覚めるにつれ、これは異様な事態だと気づく。地球から遠く離れた「プロメテウス」で、どうして自分はなくなったはずの妻を抱きしめているのだ…?

 

スワニスタフ・レムの傑作SF小説ソラリス』を映画化した2作品。人間と惑星との対話を模索したレムと、原作小説を舞台装置としか考えなかったタルコフスキー。2人の天才の衝突、そしてレムの意図を再確認しようとしたソダーバーグの苦悩。ソラリスとは一体何だったのか? 映画はそのてがかりを与えることができたのか? 2016年に発表されたみつきゃすたーの楽曲、『ソラリス』に刺激されて書いた記事。

 

 

 

さて、久しぶりに2週間ほど連続更新してみました。映画へのモチベーションを高めるための取り組みでしたが、個人的に感想くださった読者の方々、本当にありがとうございます。励みになりました。
おかげさまで本業も趣味の案件も山積みになってしまったので、また不定期更新に戻ろうと思います。週に1回以上は映画見て、引き続き書きたいな…と考えています。またお会いしましょう。

 

(プロジェクターを買ってから自宅映画ライフが捗りまくっています)

 

2021/9/5