日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

ブラックパンサー(2018年)

ブラックパンサー/Black Panther(2018年)監督:ライアン・クーグラー

 

本気で作った現代ハリウッド・アフリカ映画

 


「ブラックパンサー」予告編


アフリカの小国ワカンダには、世界に知られていない秘密がある。表向きには農耕を主とした途上国というイメージを持たれているワカンダ。しかし、国中に広がる山々の間、大きな洞穴をくぐっていくと、そこには世界最先端の技術大国が広がっている。500年前、宇宙からやってきた希少鉱石ヴィブラニウムを使って、ワカンダは世界全てを圧倒する科学技術を育んできたのだ。

そんな中、国連で発生したテロ事件において、国王ティ・チャカ(ジョン・カニ)が逝去してしまう。こうして国王の若き息子ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は、王位継承の儀式へと臨むことになった。儀式で行われる決闘の相手は、山奥に棲む部族の長であり、屈強な肉体を持つエムバク(ウィンストン・デューク)。2人の戦いが熾烈を極めていく一方、世界ではワカンダのヴィブラニウムを取り巻く不穏な影が漂い始めていた。…

 

 

 

ブラックパンサー』は2018年に公開された映画だ。ハリウッド映画、しかもマーベルの作品としては非常に珍しい(初めてな?)ことに、監督及びキャストの殆どを黒人が担当している。

こういう作品の例に漏れず、『ブラックパンサー』は、作中全編を通じて「黒人のハリウッド映画を作るんだ」という心意気が伝わってくる映画だ。アートワーク全般についていかんなく伝統的なアフリカ的なデザインをあしらったかと思えば、BGMでは黒人文化としてのヒップホップ音楽を積極的に採用している。

 

しかし一方で、本流の大作ハリウッド映画としての矜持を捨てていないところが、『ブラックパンサー』の心憎いところだ。技術大国ワカンダのシーンでは全編に渡ってCGが多用されており、それらを捉えるショットや編集方法もハリウッドの流行に沿っている。戦闘シーンでは短いショットと場面転換が高速で繰り返され、観客を(良くも悪くも)無理矢理アクションに引き込んでいく。会話シーンではクローズアップが多用され、キャラクターたちの細かい表情まで深く読み取れるようなフレーミングがなされている。

 

少々乱暴にまとめるのを承知で言えば、『ブラックパンサー』は「現代ハリウッド映画のやり口でアフリカを撮った」映画なのかもしれない。もちろんマーベル作品ということもあり、ワカンダの科学技術の描写は殆どSFじみたものと言ってよいだろう。しかしそれでも随所に見えるアフリカの大自然や、黒人俳優たちの優れた演技を見る限り、SFじみた描写はあくまで添え物に過ぎないようにも思える。この映画で味わうべき点は、「本気で作った現代ハリウッド・アフリカ映画」だろう。

 

ただ、脚本やストーリー展開については少々残念なところがある。中盤以降現れてくる悪役たちの行動原理がイマイチはっきりしないのだ。ある悪役は、「少数者への抑圧」を無くしたいという思いから主人公たちと対立するわけだが、この作品では肝心の「少数者への抑圧」が具体的に現れていない。少数者(≒アフリカ人)に対する抑圧、といえば大体察しはつくと思われるが、そうした抑圧のシーンは、まったくもって劇中に現れてこない。もちろん個人的なモチベーションは(一応)語られる。しかしそのモチベーションと行動の間にイマイチ連続性が見えてこないところがある。(マーベル映画ではありがちなことだが)

 

マーベル・ユニバースの作品である関係上、色々制約が多かったのだとは思うが、「本気で作った現代ハリウッド・アフリカ映画」として、もう一歩踏み込んだ内容を見てみたかったとは思う。ただ、全編としてかなりクオリティが高い作品な分、その惜しさが少し際立っているのかもしれないとも思う。

マーベル ブラックパンサー フルマスク コスチューム用小物 男女共用

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2018/4/8