日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

モスキート紳士/How a Mosquito Operates(1912年)

働くモスキート/How a Mosquito Operates(1912年)監督:ウィンザー・マッケイ

 

 

最初期のアニメーション、その恐るべき完成度

 

 

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家に帰ってきた男は、どこからかイヤな視線を感じて、キョロキョロとあたりを見回す。安全を確かめたところで、男は扉に鍵をかけ、すやすやと眠りにつく。

扉の前に現れたのは、山高帽をかぶり、スーツケースを携えた、一匹のモスキート。紳士じみた立ち振舞をみせるモスキートは、そろりそろりと宙を舞い、男の鼻先、チクリと針を刺し、ごくごくごくと血を吸い取っていく。…

 

 

『モスキート紳士』は1912年のアニメーション作品だ。まだアニメーションが始まって間もない時期、1920年代のディズニーらの登場よりも前に起こった作品であり、今日につながるアニメーション作品の源流として、今なお高い評価が与えられている。

 

6分少々の短い作品ということもあって、プロットやテーマの点で語るところはない。蚊が血を吸う。それだけだ。

 

注目してほしいのは、映像を構成する一枚一枚の線の細さだ。とても100年前の映像とは思えないか細い線で描かれたアニメーションは、驚くほど滑らかに動いていく。蚊のか細さ、あの鬱陶しさというものが嫌というほど表現されていて、夏でもないのに背中が痒くなってくる。

そうしたアニメーションによって展開されるのが、程よいサスペンスとユーモアというのも、これまたなんとも心憎い。蚊の目線から見て、いちばんこわいこと…日頃さんざん人間たちにやられていること…がいつやってくるのか、という不安をうまくサスペンスとして機能させつつ、それを適度に裏切ってやることでユーモアが生まれている。

 

6分というごく短い映画だが、これを見れば、明日あなたは世間話で「昨日世界でも最古のアニメを見ててさ〜」と言えてしまう。昼間の雑談のネタにはぴったりの映画に違いない。

 

冬なので、蚊に嫌悪感を抱いてしまう心配もない。

 

Winsor Mccay: Early Works

Winsor Mccay: Early Works

 

2017/12/10