日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

キャビン/The Cabin in the Woods(2012年)

 

キャビン/The Cabin in the Woods(2012年)監督:ドリュー・ゴダード


The Cabin In The Woods Trailer (HD)

大学生のデイナ(クリステン・コノリー)、カート(クリス・ヘムズワース)たちは、週末を郊外のキャビンで過ごすために遠出する。途中ガソリンスタンドに立ち寄ったデイナたちは、無愛想な店主から、目的先のキャビンに近づかないほうがいい、という旨の警告を受ける。一抹の不安を覚えるデイナだったが、せっかくの旅行ムードが、怪しげな店主の言葉一つで覆されるわけもなかった。

キャビンに到着し、快適な大自然を堪能するデイナたち。やがて夜を迎え、ビールを交えてパーティが始まった。ゲームをしながら、赤裸々に思いを語り合う。そんな中、突然大きな物音が響き、リビングには、さっきまでなかったはずの地下への階段が現れた。酔いも手伝って気の大きくなったデイナたちは、意気揚々と地下室に降り、部屋中に散らばったアンティークを手に取る。中でも、古びた日記には、100年以上も前にこのキャビンで過ごしたという家族の物語が刻まれていた。その末尾には、意味の分からないラテン語の文章。嫌がりながらも、博識のデイナはその言葉を口に出す。…

場面は変わって、近代的なモニター室。なんと、ガソリンスタンドからキャビンにいたるデイナたちの行動は、全てカメラを通じて記録されていた。キャビンに困惑するデイナたちの姿を爆笑しながら眺める、大人数の男たち。そしてデイナがラテン語の文章を読み終えた時、モニター室のボルテージは最高潮に達した。「ゾンビだ!ゾンビが選ばれたぞ!!!」…

 

 

 

今週のお題「私がブログを書きたくなるとき」、というのが今週のはてなブログのお題らしい。毎日どうせ記事は書くのだが、何より「書きたい!」と思うのは、「期待せずにみた映画が、予想以上に面白かった時」。赤宮にとって、『キャビン』はそういう作品だった。

 

『キャビン』は、2012年のアメリカのホラー・スリラー映画だ。『オデッセイ』や『クローバーフィールド』で脚本を務めたドリュー・ゴダードが監督を務め、その異色な作風から一部でカルト的な人気を誇る作品となっている。

とはいえ、メインの役柄を演じる青年にはクリス・ヘムズワース(『マイティ・ソー』)が起用されているなど、決して単なるマイナー映画とは言えない。従来のあらゆるホラー映画を小馬鹿にしたようなその作品構成、そして終盤の怒涛のスリラー展開は刺激的で、十分期待を持って観ていい作品だ。

 

では、『キャビン』のどの辺りがホラー映画を小馬鹿にしているのか。『キャビン』では、「郊外の小屋(キャビン)に出かけた若者たちが、軽率な行動から、かつて小屋で亡くなったゾンビたちを呼び起こしてしまう」というのが基本スト―リーとなっている。ホラー映画を5本も観たことがある人なら、「郊外の小屋」の時点で「あぁ…またか…」となるし、「ゾンビ」ともなれば「はいはい、またですね…」となってしまうに違いない。日本人の大半は『バイオハザード』をプレイするか鑑賞するかしているだろうから、きっと『キャビン』を観始めた段階でうんざりしてしまう人も多いだろう。

しかし、そこで観るのをやめるのはもったいない。『キャビン』は、こうした典型的なストーリーが、実は裏方の人間たちによって演出されたものだった…という形でストーリーを語るのだ。主人公たちがゾンビに襲われるのも、傷つけられるのも、結局は「仕込み」にすぎない。ゾンビは確かに人間たちを傷つけるのだが、その裏には仕込みの職員さんたちが居るのだ。

ホラー映画でよくある、突然「手分けして捜索しよう」と言いはじめる人間、絶妙なタイミングで発生する停電、突然崩れる床など、ホラー映画の様式美を全て「仕込みなんです!」ということにしてしまっている。展開の合間には、適切なタイミングでボタンを押せなかったことを悔やむ職員や、機器のトラブルで上手くトラップが発生しなかったために逃げおおせてしまう主人公たちの姿が映される。こうなるともう爆笑するしかない。中でも極めつけは、主人公たち一行の一人が隠しカメラを見つけてしまう場面だ。「え!俺たち、リアリティTVに出てるってこと!?」命の危機さえもポジティブに捉えてしまうアメリカン・スピリットは見習っていきたいと思う。

 

非常に愉快な作品では有るのだが、問題があるとすればキャスティングだ。仮にもホラー映画、主人公一行にクリス・ヘムズワースを入れるのはどうなのか。なんせマイティ・ソーである。

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(この人がゾンビに追われます)

 

『キャビン』には大小様々な鈍器が登場するが、そうした場面を見るたびに「はやく!ソーに渡して!!!ゾンビ倒せるから!!!」と思わずにはいられない。

 

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(この人がゾンビに追われます)

 

仕方ないことではあるのだが、一旦スーパーヒーローのイメージが染み付いた俳優をホラー映画で逃げ続けさせるのには無理がある。そもそも190cm超えの大男、ゾンビたちと真正面から戦っても違和感がない。流石に制作陣も気づいていたのか、ヘムズワースの退場シーンは他のキャラクターたちと一線を画すものになっている。

そこまでするくらいなら、もう少し愉快なお兄ちゃんでも雇っておけばよかったのではないか。ヘムズワースのネームバリューに期待する気持ちもあったのかもしれないが、『キャビン』では彼のパーソナリティが逆方向に作用した結果となったのだろう。

 

さて、色々と『キャビン』について語ってはみたものの、ネタバレ禁止の「日刊映画日記」、実は赤宮は後半の展開に全く触れていない。異質なホラー映画である『キャビン』、後半は更に破天荒な流れを迎え、最終的には予想もつかない展開を迎える。普通のホラー映画に飽きてしまったら、デイナたちと一緒に、郊外の『キャビン』を体験してみるのも良いかもしれない。 

2017/11/6