日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

ユージュアル・サスペクツ/The Usual Suspects(1995年)

ユージュアル・サスペクツ/The Usual Suspects(1995年)監督:ブライアン・シンガー


映画「ユージュアル・サスペクツ」日本版劇場予告

関税取締局の捜査員であるクイヤン(チャズ・パルミンテリ)は、カルフォルニア州で起こった船舶の爆発事件を巡り、その生存者であるキント(ケヴィン・スペイシー)を尋問する。キントは、左半身に障がいを抱える詐欺師であり、その罪から過去に刑務所に入れられたことがあった。その過去を突いて脅しをかけるクイヤンに対し、キントは事件を巡る自分の記憶をつらつらと語り始める。

爆発事件が起こる6週間前、ニューヨーク警察署にて、曲者ぞろいの前科者5人が銃器強盗の容疑者として集められた。元汚職警官のキートンガブリエル・バーン)の恋人の尽力により、5人は立件されず釈放されることになったが、この一件をきっかけに、彼らは協力して宝石強盗を行うことを決意する。

宝石強盗を見事成功させたキートンたちは次の宝石強盗に取り掛かる。多少のアクシデントがありつつも無事目的のケースを奪取するが、その中に入っていたのは宝石ではなく、麻薬だった。怒ったキートンたちは情報提供者に詰め寄り、大元の依頼人接触する。しかし、依頼人の弁護士との会話で明らかになったのは、一連の依頼の黒幕が伝説のギャング「カイザー・ソゼ」であるということだった。…

 

ユージュアル・サスペクツ』は5人の前科者たちの活躍を回想形式で語るサスペンス映画だ。物語は捜査員が目撃者に尋問するシーンと、目撃者の回想シーンを重層的に展開していくことで、深みのある語り口を実現している。今日ではよく見られた手法ではあるが、現在と過去(回想)を交互に展開するやり口は、1990年代当時では比較的目新しいものだった。もちろん、『市民ケーン』など、回想を利用した物語は昔から数多く存在していたが、登場人物の回想を物語の中心に置き、かつそれを極めて効果的なサスペンスに絡ませている、という点で、『ユージュアル・サスペクツ』は画期的な作品であったと評価できるだろう。なお、こうした物語構成を評価されて、本作品はアカデミー脚本賞を受賞している。

そうした複雑な物語構成を支えているのが、脇役を演じるケヴィン・スペイシーの名演技だ。『交渉人』『セブン』『アメリカン・ビューティー』など数多くの名(迷)演技で知られる彼は、本作品でも障がい者キントを見事に演じきっている。捜査員クイヤンからの尋問に、皮肉を交えつつも怯えを見せるその人間臭さ、所作の細かさは、ケヴィン・スペイシー以外には任せられない役柄であるように感じる。実際、批評家からの評価も順調だったようで、彼もまた本作品でアカデミー助演男優賞を受賞している。

宝石強盗を巡る前半の展開から一転して、後半では伝説のギャング「カイザー・ソゼ」の存在を中心に物語が進む。回想で語られるソゼの物語や、彼にまつわる逸話の数々、そして彼が示した残虐性などは、思わず宝石強盗たちに同情してしまうほど恐ろしい。

 

サスペンス映画、ということで、今日もまたあまり多くを語れないわけだが、映画を見る上で、これだけ上質な脚本を持つ作品に触れないのはあまりに勿体無い。どこかで偶然ネタバレを知る前に、ぜひ。

2017/10/15