日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

バットマン・ビギンズ/Batman Begins(2005年)

バットマン・ビギンズ/Batman Begins(2005年)監督:クリストファー・ノーラン


『バットマン ビギンズ』予告(英語) Batman Begins Official Trailer

ゴッサム・シティの大富豪ウェイン家。その跡取りブルース・ウェインクリスチャン・ベール)は、幼少期、暗い井戸に落ちたことが原因でコウモリを恐れていた。そしてブルースは、オペラからの帰り道で遭遇した強盗犯により、両親を殺されてしまう。孤児となったブルースは、心優しきウェイン家の執事アルフレッド(マイケル・ケイン)により温かく育てられることとなった。

やがて時は経ち、逞しい青年となったブルースだったが、強盗犯への復讐心は消えず、自ら彼の命を奪うことを決意する。しかし、仮釈放された強盗犯は、ブルースの目の前でマフィアの刺客に殺害されてしまった。

復讐心の行き場を失い、ブルースはマフィアのボスであるファルコーニ(トム・ウィルキンソン)の元を訪れる。この街の悪を象徴するファルコーニに対して怒りをぶつけるブルースだったが、彼は暴力をもってブルースを痛めつける。ブルースは正義、そして自らの無力さを思い知り、悪に対抗する力を得るために世界を巡る旅に出る。

悪を知るため、旅先で犯罪を繰り返したブルースは、やがて刑務所に投獄される。そんなブルースの元に現れたのは、謎の組織「影の同盟」のメンバー、ヘンリー(リーアム・ニーソン)だった。厳しい修行の後、自らの根源的な恐怖を乗り越えたブルースは、正義に対する価値観の対立から「影の同盟」を壊滅させる。

そしてブルースは故郷、ゴッサム・シティに戻ってきた。治安の悪化し続ける街で悪を撲滅させるため、自らが恐怖の象徴として立ち上がることを決意する。今は亡き父の会社が開発した最新テクノロジーを身にまとい、ブルースは「バットマン」を名乗って自警活動を開始する。…

 

バットマン・ビギンズ』は、アメリカの大人気コミック『バットマン』を実写映画化したものだ。この作品に続く『ダークナイト』『ダークナイトライジング』と合わせてダークナイト三部作と呼ばれ、全てクリストファー・ノーランが監督を務めた作品だ。

メメント』で新進気鋭の監督として名を上げたノーランは、2005年、満を持して『バットマン・ビギンズ』を発表する。元々無類のバットマンファンだったというノーランだから、この作品に対する気合の入り方は並大抵のものではなかった。そしてその後の経過を見る限り、ノーランの熱意は見事ダークナイト三部作に昇華されたと言うべきだろう。

 

バットマン』はダークヒーローを扱う作品だ。悪に対して正義を執行する、という文句が掲げられているものの、正義の手段として行使されるのは強大な暴力だ。ブルースはその莫大な財産と最新テクノロジーを存分に活用し、ゴッサム・シティにはびこる犯罪者たちを文字通りボコボコにする。

三部作のうち一作目ということもあり、この作品ではそうした暴力についてバットマンが悩む場面はあまりない。もちろん、「影の同盟」という悪組織との関係で、正義の執行(≒私刑、あるいは死刑)について考える場面も存在する。しかし、2時間半にわたる作品のテーマとしてはそれほど大きなものではない。

バットマン・ビギンズ』では、自分より強大な悪に押しつぶされそうになりつつも、それでも正義を執行しようとする若者の姿が前面に押し出されている。三部作の一作目の段階では、まだ十分な強さがバットマンに備わっておらず、その先の悩み事がまだ深刻化していない、ということなのだろう。

映像づくりとして特筆すべき点としては、とにかくミザンセンが格好いい。『バットマン』の雰囲気に合わせて画面の多くが黒基調で制作され、バットマンの暗い心中にうまく感情移入できるよう工夫されている。コスチューム、マント、その他もろもろの便利グッズなども、見ているだけでワクワクする仕上がりになっている。この辺りはノーランのオタク心が成せる技だろう。とにかく、どの場面を切り出しても格好いいし、一つ一つの画面がそれ自体美しい作品としてうまく設計されている。

 

興行的成功を修めた『バットマン・ビギンズ』は、その後シリーズ化され、やがて名作『ダークナイト』が生み出されることになる。今日はこの辺にして、赤宮のバットマンへの熱い思いは、また別の機会に語ることにしておこう。

 2017/10/18