日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

第三の男/The Third Man(1949年)

第三の男/The Third Man(1949年)

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The Third Man - Trailer with Theme (Anton Karas)  第三の男 アントン・カラス

第二次大戦後のウィーン。アメリカの売れない作家マーチンスは、親友のライムから仕事を依頼したいと言われ、意気揚々とウィーンまでやってきた。しかし、そこで彼は、マーチンスが到着する前日、ライムが自動車事故で亡くなっていたことを知らされた。二人の目撃者によると、ライムは即死であったという。ショックを受けるマーチンス。

マーチンスは、ライムの葬儀に参加する。そこで彼は、ライムを「追っていた」という軍人、キャロライン少佐と出会う。キャロラインによると、ライムは凶悪な犯罪に手を染めており、死んで当然の男だということだった。マーチンスは、自分の親友がそんな男であるとは到底信じられない。事件の概要がどこか釈然としなかったこともあり、マーチンスは自ら事件の真相究明に乗り出していく。

調査を続けるうちに、マーチンスはライムの恋人であったアンナと知り合う。アンナとともに聞き込みを続けていくと、ライムの自動車事故の現場には、「三人」の目撃者が居たことが判明する。この「第三の男」を発見するため奔走するマーチンスたち。しかし、徐々に彼らの身に危険が及び始める。

 

凄く嫌なやつだが、どうも憎めないやつというのが必ずいるものだ。そういうやつとの交友関係を続けていると、そのうちとんでもない迷惑をかけられて、もう二度と会ってやるかと思うことになる。しかし、その後ふとしたきっかけで酒でも飲むと、想像以上に楽しいものだから、ついつい元通りになってしまう。そしてまたそのうち嫌な思いをして、今度こそは完全に縁を切ろうと思うのだが…つまりまあ、続いてしまうものなのだ。

『第三の男』の物語は、冒頭に判明するライムの死を巡って展開していく。しかし、ライムを追う人びとの動機は一様ではない。マーチンスはライムとの友情に報いるため。アンナはライムとの愛を貫くため。キャロラインはライムを巡る罪を撲滅するため。このように、登場人物たちはそれぞれ強い思いをもってライムの死に向き合っていく。しかし彼らを突き動かすものが異なるために、時として衝突し、時として協力していくことになる。

しかし、軍人としての義務を全うするキャロラインはともかく、マーチンスとアンナはどうして、ライムにそこまで惹きつけられてしまうのだろうか。彼らは、時に自分たちの身が危険に晒されてでも、ライムの死の真相を確かめるべく奔走する。分割統治下にあるウィーンは、一見すると平和な場所だが、政治的には大国同士の緊張の下に晒されている。劇中でも、マーチンスとアンナの行動を快く思わない勢力は、時に彼らを実力で排除しようとする動きを見せる。そんな苦境を、マーチンスとアンナは、ライムとの友情、愛を糧に戦っていく。一体ライムの何が、それほどまでの友情と愛を育んでしまうのか。赤宮は、その理由を、先に挙げた「凄く嫌なやつだが、どうも憎めない」というところにあると思ってしまうのだ。

マーチンスの友情とアンナの愛は、物語が佳境を迎えるにあたって、大きな挑戦を受けることになる。その先の展開についても、大いに意見を述べたいところなのだが…極上のサスペンスであるこの展開をネタバレしてしまうのは、あまりにも味気がない。『第三の男』とは何だったのか。ライムは善人なのか、それとも極悪人なのか。そしてライムを巡る真実とは何なのか。それを知った時、マーチンスとアンナはどのような反応を見せるのか。そして、すべてが終わり、映画史に燦然と輝くあのラストシーンを見た時、あなたは何を感じるのだろうか。

 


「第三の男」テーマ:映画「第三の男」OST

(テーマ曲有名。エビスビール。)

第三の男 オーソン・ウェルズ ジョセフ・コットン CID-5009 [DVD]

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 2017/9/18