日刊映画日記

赤宮です。楽しく映画を語ります。ネタバレは少なめ。

ヒズ・ガール・フライデー/His Girl Friday(1940年)

ヒズ・ガール・フライデー/His Girl Friday(1940年)監督:ハワード・ホークス


His Girl Friday - Trailer

モーニング・ポスト紙の元敏腕記者ヒルディは、かつて夫であり、上司であったウォルターに再婚と退職の報告に向かう。しかし、ウォルターは未だヒルディを記者として評価し、女性として愛しており、再婚と退職を頑として認めようとしない。

ヒルディを諦めきれないウォルターは、ヒルディとその婚約者ブルースと、3人でランチを共にすることに成功する。婚約者と意気投合したウォルターは、さっそく、翌日行われるある受刑者の死刑執行を巡り、腕の良い記者が必要であることを主張する。はじめは難色を示したヒルディであったが、ウォルターの巧妙な芝居と莫大な報酬に釣られ、「これが最後の仕事」として引き受けることになってしまった。…

 

ヒズ・ガール・フライデー』は、元妻を諦めきれないウォルターと、仕事を辞めて新生活を夢見るヒルディを巡るドタバタコメディ作品だ。上映開始後、「よくある男女の新聞記者の話だ」とあるように、1940年当時のアメリカのジャーナリズム風景を赤裸々に書いた作品でもある。

ケイリー・グラント演じるウォルターは、まさにやりたい放題な男だ。元妻ヒルディへの思いが強すぎて、それを叶えるためにありとあらゆることをやってしまう。新聞社の編集長という権力を利用して、犯罪ギリギリ、というより完全に犯罪行為をどんどん積み重ねていく。それでいて本人に悪気はない。正直言ってかなり危ない役どころだとは思うのだが、違和感なく二枚目に魅せるのはさすがケイリー・グラントといったところだろうか。

ヒロインであるヒルディの描写も興味深い。今日では当たり前になった「働く女性」が、1940年の時点でどのように見られていたかをうかがい知ることができる。例えば、ヒルディは優秀な新聞記者ではあるが、当初は「容姿で採用された」新聞記者であると明言されている。ヒルディが上昇志向が強い、自立した女性であるがゆえに気づきにくいが、作中では同様の女性差別描写が散見される。現代から見れば「時代遅れ」な描写かも知れないが、まあ、80年近く前の作品にそのような批判を行うのはナンセンスだろう。

とはいえ、ヒルディが「仕事か、家庭か」という難題に向き合う姿は、時代を問わず共感を呼ぶように思われる。この作品はコメディなので、笑いを損ねてまで、女性の人生全般に直接言及したり、批判したり、といったことをしない。しかしヒルディがユーモアたっぷりに「仕事か、家庭か」で迷う姿には、明確に男女同権を訴えるメッセージなどよりも、観客の胸に響かせる説得力がある。

上映時間は90分超と、短い作品ではあるが、かなりテンポよく進むので、鑑賞後は一瞬で時間が過ぎ去ったような感覚がある。細かい伏線を次々に張り、爆笑必至の伏線回収を行っていく話の流れは、これぞアメリカの王道コメディといった感じがした。

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2017/10/4